NERUMAE日記

おやすみ前にいらっしゃい。

インド人彼氏とゴジラな私の北九州旅行。【平尾台・プロポーズ編!】(前編)

ニレーシュと付き合い始めて約1年が経った。

ニレーシュはとても素敵な人だ。

クリケットの話をしているときは子供みたいで、将来の話をしているときは誰よりも頼もしい大人みたいで、
「今日のはすごかった」と詳細なトイレ報告をしてくるときは隠し事のない家族みたいで、料理を作ってくれようと苦手な包丁を必死に動かしているときはかわいい恋人だ。

この人が私の人生に登場してから、私は恋人と友達と家族がいっぺんに増えたような気分で毎日を過ごしてきた。


そんなニレーシュが7月14日にプロポーズをしてくれた。

ちょうどその日から夏休みをとっていたニレーシュが「北九州に行こう」と誘ってくれたのは6月初旬のことだった。私がチケットを予約して、ニレーシュが「これはしずえの誕生日プレゼントね」と旅行代金を支払ってくれた。

せっかく北九州に行くなら私の両親にも会う? とちょっとドキドキしながら誘ってみたら「緊張するね…」と言いながらも楽しみにしてくれて、母にはストールを、父にはスコッチウイスキーのお土産を準備してくれた。


独身娘でごめんなさい


帰郷の日が近づいてきたある日、電話で父と母にさり気なく「ニレーシュと一緒に帰るよ」と伝えたら実際は全くさり気なくなく、大変ぎこちない会話になってしまった。

そりゃそうだ。いい年の娘が彼氏を家に連れて帰るのだ。母も父も「結婚のあいさつかな」と思うのは当然だ。


遠回しに「一緒に来るって、そういうことなの?」と聞いてくる両親に「いや、そういうのじゃなくて、福岡旅行しよう、っていうことになったからせっかくそこまで行くなら実家にも行こう、ってなってね」とごにょごにょと説明したのだった。

「そういう話じゃないの…」と母はなかなか残念そうで、私もちょっと申し訳なくなってしまった。


ニレーシュが素敵な人だから私はただ会ってほしかったのだけど、このタイミングじゃなかったかもしれない…という気もしてきてしまった。

旅行の日がだんだん近づいてくる。不安。


ちょっと憂鬱な34歳のはじまり


旅行前日。2018年7月13日(金)は私の34歳の誕生日だった。

仕事終わりに待ち合わせをして、ゆりかもめに乗ってお台場のレストランに連れて行ってもらった。夕日が沈む海を見ながら食事をした。


もう旅行のチケットをプレゼントとしてもらっていたのだけど、食事のあとで「旅行に持っていってね」とかわいい麦わら帽子ももらった。お誕生日らしくスパークリングワインを飲んで、「Happy Birthday しずえ」のプレートがのったお誕生日のケーキも一緒に食べた。


お台場から見える海は空も海も夕焼けでピンク色に染まっていて、カラフルな明かりがついた屋形船があちこちでゆっくりと移動していた。

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夕日のせいか、海のせいか、私は少しセンチメンタルになっていた。

私はこれまで1日も誰にも奪われることなく日々を重ねて世界中のみんなと平等に34歳になったはずなのに、記憶というのはいつも消えたり現れたり延びたり縮んだりして厄介で、「まだちょっとしか生きてない気がするのに、なんでもう34歳なんだっけ」と食事をしながら少し落ち込んでいた。しかもお酒で体が疲れてしまって、帰り道では少しぐったりしてしまった。

ニレーシュがいろいろと考えて準備してくれた大切な1日だったのに、心も体もうまくついていかない。ちょっと不安な新しい1年の始まり方だった。


翌日、早朝の新幹線に乗って、福岡・小倉に向かう。

4時間半の道中、前夜から体調が優れない私は薬を飲んで新幹線では寝てばかりだった。

降り際、「初めて一緒に乗った新幹線だったね」と言われて初めて確かにそうだった、と気づいた。始終寝て過ごしてしまった。小さな思い出も大事にしてくれるニレーシュと一緒にいると、自分が触るものすべてを台無しにしていくゴジラみたいに思える時がある。


なつかしい場所で腹ごしらえ

小倉で真っ先に向かったのは旦過市場(たんがいちば)。
駅前からつづく長いアーケードの奥の方に昔からある小さな市場だ。大人気の観光地というのとも違ってこじんまりしているけど、常に地元のお客さんで賑わっていて好きな場所。

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店内がひゅっと細長いお寿司屋さん「市場寿し」で、ニレーシュは海鮮丼(1,080円)を、私は握りのお寿司(1,080円)を食べた。私のは茶碗蒸し付き。


「これ食べてみる?」と茶碗蒸しを分けてあげようとしたら、ニレーシュは日本の友人との温泉旅行で「これ食べたことある? 美味しいよ」と茶碗蒸しについての手ほどき(?)を受けたことが何度かあったそうで、「僕がこれを知らないと思ってもらっては困る」という感じで堂々と口にしていた。

…のだが、食べながら「甘くないプリン」と形容していて「それはなんかちょっと違う」と私は内心思っていた。

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市場寿しのお寿司は、市場の中なのに上品な、シャリが大きすぎないお寿司だ。そしてお寿司もさることながら、その味をぼやけさせるくらいに玉子焼きが美味しかった。

ニレーシュの海鮮丼も豪華だった。小倉に来たらまた行きたい。


いよいよ北九州観光! 自然派さんには平尾台がおすすめ

食後に市場を少し散歩したあと、予約していた車を借りにニッポンレンタカーに。つい先日、軽井沢で石柱に思いっきりぶつけた前科があるニレーシュ。保険を全部つけてもらった。

向かったのは平尾台。小倉駅から25キロくらいで行ける大自然だ。妹が以前写真を見せてくれて、一度行ってみたかった場所だった。

平尾台は山口県の秋吉台(あきよしだい)とならぶ日本有数のカルスト台地で、天然記念物・国定公園・県立自然公園に指定されています。 ピナクルが羊の群れのように見える羊群原(ようぐんばる)や、地下に川が流れている千仏鍾乳洞(せんぶつしょうにゅうどう)など、独特なカルスト地形をもつ平尾台の自然やそこに生息する動植物をご紹介します。

平尾台自然の郷/平尾台の自然


日差しは強くても気持ちのいい風が吹いていて、連なる小山は子供の時によくお絵描きした「山」が現実になったみたいな世界だ。のびのびした気分になる場所。

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「目白鍾乳洞」(入場料500円)、「千仏鍾乳洞」(入場料800円)と2つの鍾乳洞に入ってみたのだけど、この千仏鍾乳洞が図らずもかなりのアドベンチャー洞窟だった。

f:id:shinshizue:20180722164456j:plain目白鍾乳洞

まずは駐車場に車を止めて、500メートルほどのなかなか急な坂を下る。降りきると、お土産屋さんと見晴らし台のある広場に出る。

鍾乳洞の入り口の手前にはなぜかコインロッカーとサンダルに履き替える場所がある。サンダルは無料。何も考えずなんとなく履き替えたけど、この選択は120パーセント正しかった。

入場券を買って、洞窟へとつづく緑いっぱいの階段を登って、いざ入洞。

全長1.2kmの大冒険! 千仏鍾乳洞(せんぶつしょうにゅうどう)

ポタポタと水がしたたってくるしっとりした鍾乳洞内。道の両脇には川のように冷たい水が流れている。

「ここの洞窟は長いんだね」なんて言いながら2人で順路を歩いていたら、途中から進路が川の中に突っ込んでいった。

なんて書けばあの光景が伝わるんだろう。
つまり、 進路 = 川の中  なのだ。


え!この中を歩くの! とびっくりしつつも、サンダルに履き替えた意味がやっと分かった。「これ冷たいよ…!」とグチ半分、可笑しさ半分で細い洞窟内をずんずんと進んでいく。

途中でまた陸に戻るのかと思ったら、川が終わらない。全然終わらない。しかも、初めは足首くらいだった水位が途中でひざ丈を超えてきた。これ以上ジーンズまくれないよ。ということで、子供だったらお母さんに怒られるくらいびしょ濡れになった。

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でもなんだかめちゃくちゃ楽しい。

どこまで進んでも全然終わりが見えてこないので、同じ道を帰ってきている人に「この先まだ長いですか」と聞いたら「うーん、結構ありますよ」という返事が帰ってきた。山登りしてるみたいな質問だな。ここで使うとは。

私が前を歩いたり、ニレーシュが前を歩いたり、2人で細い洞窟の中を進みながらニレーシュもこの瞬間をすごく楽しんでいることが空気で伝わってきた。「ひゃー」とか「オーマイゴッド」をひたすら繰り返しながらじゃぶじゃぶと歩いた。


洞窟は途中からとても細く、天井も低くなっていって、最終的にずっと行く手を照らしてくれていた照明もなくなってしまった。それでも進めるところまで進もう、とスマホのライトでニレーシュが先を照らしてくれた。


そうしておそるおそる暗闇を進んでいくと、「地獄の門」という名前の看板が下がった関門に出くわした。水位は太もも近くまできているのに、天井の鍾乳石は胸の高さまで下がってきている。
通ったらお尻までびしょ濡れになってしまいそう…。

これを知ってたら水着着てきたね、と言いながら、通る? やめとく? と2人で相談する。ニレーシュはこういう時1人で進んだりしない。

私は先が見てみたかったので、ニレーシュに後ろから照らしてもらって、カメラを濡らさないようにしっかり抱えて、お尻にひんやりしたものを感じながらなんとか通った。ニレーシュも長い体を折りたたんでお尻を濡らして難関を通り抜けた。


地獄の門のそのすぐ先は、今度は天井から水が降り注ぐ滝になっていた。
スマホもカメラも持っていたので「ここまでだね」と諦めもついて、ようやく引き返すことにした。1本道だからもう1回地獄の門を抜けなくてはいけなくて、また2人で「ぎゃっ」「ぎゃっ」とお尻を冷やした。

洞窟を出たあとで、入り口のお茶屋さんの隣りに道内案内図を見つけて「今更見てもしょうがないね」と記念写真を撮ったのだが、詳細を知らずに始まるというのが冒険の醍醐味なのだ。知らずに入るのがいいのだ。

それなのに興奮してこんなにも長々と説明を書いてしまった。読んでしまった方、これから行く方、ごめんなさい。

みなさんもお出かけの際には水着持参でどうぞ。そして私が進めなかった地獄の門の先の「第一の滝」「第二の滝」「第三の滝」の感想を聞かせてください。


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遅れてやってきた。地獄の門のさらなる災い

大満足した鍾乳洞探検のあと、平尾台の景色をひとしきり楽しんで近くの温泉に出かけた。

ここではニレーシュが(地獄の門のせいで)しっとりと濡れた千円札を突っ込んで牛乳の自動販売機を故障させて、お店の人に怒られた。

何かあったときのために連絡先を書いて出てきたけど、その後「機械が直りました。2度と濡れたお札を自販機に入れないでください」という連絡をもらった。旅先で怒られるなんて…と2人でしょんぼりした子供みたいな気持ちになった。お店の方、本当にごめんなさい。いいお湯でした。


お風呂のあと、夕食はここにしようと見つけていた地元の居酒屋さんはいっぱいで、その後も行く店行く店満員で、やっと座れたお店は焼肉屋さんだった。

お店を探す道中、車の運転のことで言い合いをしてしまって(駐車が苦手なニレーシュと「線の中に入るように停め直して」としつこい私のいつもの攻防)、ブスくれながら食事をする私をニレーシュがなだめていた。


旅程をコンプリートする前にレンタカーを返す時間が迫ってきていたのだけど、「車は明日返そう。平尾台で星が綺麗に見えるらしいからもう1回戻ろうよ」とニレーシュ。

私は1人でビールも飲んでいたしで内心「…疲れたし早くホテルで寝たいのにな」と、面倒くさがりながらレンタカー屋さんにしかたなく電話をした。


平尾台の星のしたで

もう一度夜の山道をゆっくり走って、平尾台に着いた。
動物がたくさん隠れていそうな、静かな静かな山道だった。

戻ってきた平尾台は、昼とはまた違った大自然だった。

新月なのか月は出ておらず、空は本当に満天の星空。星がもっとよく見えるようにと2人で暗い道を選んで散歩した。


ヘビとか出たら怖いね…とか、北海道で見た星とどっちがきれい? なんて言いながら、暗い足元と明るい星空とを交互に見て歩いていたら、「昔しずえにどんな場所でプロポーズされたいかって質問したのを覚えてる?」とニレーシュが聞きながらごそごそと小さい箱を取り出した。

いつどこでそんな話をしたのか、なんて答えたのか、私はもう忘れてしまっていたけれど「星がたくさん出てるところ」とその時の私は答えたのだそうだった。


ニレーシュは ”Will you marry me?(結婚してくれる?)” と言いながら指輪をくれた。
私は笑いたいのか泣きたいのかよくわからない顔で、でもとても嬉しくて、うん、とありがとう、をたくさん言った。


それと同時に、私はいま温泉あがりのすっぴんで、焼肉屋で1人でビールも飲んで、ここまでの道中ずっとブスくれていて、ゴジラモードだったことを思い出した。なんなら地獄の門のせいでジーンズのお尻までちょっと湿ってる。

34歳になっても「備えよ常に(※)が全くなってない。

満天の星空の下、これは神様からの戒めなんじゃないかとビリビリ感じていた。

(※)気に入っているボーイスカウトのモットー。気に入ってるのに身についてない。


「登ったときは恋人だったけど降りてる今は婚約者ですよ」と大仕事が終わってごきげんなニレーシュは、帰り道の車の中でどんなふうに準備していたのかを教えてくれた。

妹に指輪のサイズを聞いたり、星が見える場所を探したり、コロコロと旅程や気分を変える私をなだめたりで大変だったようだった。

心から同情したけど、ニレーシュの行動をひとつひとつ思い返しては「あんなに星を見ようってこだわったのはこれだったのか」と可愛さに顔をなでまわしたい気分だった。



幸せな今日と幸せな明日のあいだで眠る

夜10時を過ぎて、ようやく黒崎のパールシティホテルに到着。
長い長い1日だった。2人でベッドに倒れ込む。

もう始まってしまっていたサッカー・ワールドカップをニレーシュが熱心に見ている横で(今調べてみたらベルギー対イングランドだった)私は何度も手元を見ながらいつのまにかうとうとしていた。

自分の大切な人が「この人とこの先の人生を過ごそう」と決意してくれるというのはこんなにも幸福と安心とワクワクで満ち足りたものだったんだ。

安らかな気持ちに包まれて、ふと忘れて、また波のようにそれが戻ってくる。

ふかふかのベッドに最高のまくらよりももっと心地いい。子供の頃に戻って、母の隣りで寝ているようなあの感覚。



そうだ、明日は両親に会う。
喜んでくれる2人の顔まで浮かんで、早く明日が来てほしいような、ずっと今日が続いてほしいような、不思議な時間だった。

ニレーシュは隣りで「今日は解説が松木さんじゃない」とがっかりしながらワールドカップに集中していた。


(北九州旅行・両親にあいさつ&婚約報告編につづく)
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