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ビシェノ・ペンギン物語【4】

(前回までのおはなし)

 

タスマニア・ビシェノの町はずれにある Pademelon Park パディメロンパーク

ここではたくさんの「ワケあり」の野生動物たちが保護されている。

親を亡くしたもの。怪我したもの。人にイタズラされたもの。

それぞれ成長を助けてもらったり、傷を癒やしたりしたら、また自然の中に返される。

 

ここで保護されているペンギンたちも同様、準備ができたら海に返されることになっている。

ペンギンたちの、海に帰る「準備完了」の条件は3つ。それは、

 

・十分な体重になっていること。

・羽が防水になっていること。

・人を避けるようになっていること。

 

早朝。まだ辺りが暗い中、海に帰っていくペンギンたち

 

 

ちょっとずつ、みんな違う

 

多いときには20羽ほどいて、どれも全く同じに見えていたペンギンたちも、日々エサをあげていると「この子はよく食べる」「この子は羽の色がちょっと違う」「この子は片足が不自由」「この子はよく太ってる」「この子は痩せてる」とか、うっすらと特徴が見えてくる。

 

中にはまだ子どもの毛のものもいて、頭の上から肩にかけて茶色のふわふわの毛が残っている。ふわふわちゃんと呼んで可愛がっていた。…元気かな、元ふわふわちゃん。

 

イーリとふわふわちゃん。後ろは先日の日記でも紹介した保育器

 

 

早く大きくなってね

個体によって体重の増え方もいろいろだ。

同じ量をあげていても、他のペンギンのエサまで欲しがるものもいれば、食べている途中で「もう食べたくない」と首を振るものもいる。

 

私がお手伝いを始めた3月初旬には、ペンギンたち(保護されていたのはフェアリーペンギン)は500gあるかないかくらいだったと思う。

始めの頃は1食50~60gだったエサは、4月半ばには100g以上にもなった。

海に返す前に体重測定をしてみたら、卒業組は700g〜800gに増えていた。

 

野生の成人?ペンギンは1kgを超えるという。海に戻ったペンギンたちがどんな風に魚を取って生きていくのか、そこまで見守ることはできない。でも痩せた体で送り出すよりは、確実に死のリスクは低くなる。

残留組は、第1陣を見送ってさみしくなった檻で、しばらくまた体重増加合宿をすることになる。

 

ちょっとさみしそうな居残り組。2羽だけになっちゃったね…

 

 

うれし、さみしの反抗期

 

大人に近づくにつれて、ペンギンたちは段々と人の手からエサをもらうのを怖がり、嫌がるようになる。「エサなんか要らん! 今すぐここから出せ〜!」嫌がるペンギンたちを見ながら、Vickiがよくアテレコしていた。

野生がしっかり身についている証拠だから、これは喜んでいいことだ。

 

「オレに構うなよ」モード  photo: Gallery_Pademelon Park

 

 

ただ、こういう「イヤイヤ」が激しいペンギンにエサをあげるのは大変な作業だった。そもそも捕まえにくいし、魚を1切れ食べさせるたび、くちばしをこじ開けて押し込まなくてはいけない。

野生の動物は人から受けるストレスにとても弱いから、接触している時間をできるだけ短くしなくてはいけない。もちろんナデナデなんてしない。

 

体重測定当日。暴れまわるペンギンと作業を急ぐVicki

 

 

 

かわいいお尻に隠れたヒミツ

 

JeoffとVickiはペンギン小屋の中に流れるプールを作っていて、ペンギンたちは食事のあと、しばらくプールで泳ぐのが日課だ。

 

「シン、見て。

水の上で高く浮いてるのと、沈んでるのがいるでしょ」

「うん」

「高く浮いてるのは、羽がウォータープルーフになってるってこと。

沈んでるのは、まだ羽の準備ができてないの」

…ほ〜! なるほど!!

 

 

ペンギンたちは泳ぎながら、クルッ、クルッと体を何度も回転させる。

聞いてみると実はこれがウォータープルーフ(防水)のヒミツで、ペンギンたちはお尻の近くから出ている特殊な油を、くちばしですくい取って自分の毛に塗り込んでいる。その作業がこの動作なのだそうだ。

 

毛に塗られたこの油のおかげで、ペンギンたちは水に浮きながら泳ぐことができているのだった。

あっという間の出来事で、私の目にはただ回転しているだけにしか見えなかった。

 

次に気持ちよさそうに泳いでいるペンギンを見たら、「クルッ」の瞬間、見てみてください。

 

(つづく)

 

 

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photo: Pademelon Park HP