パトンビーチに続くバングラ通りは夜の歓楽街になっている。通り沿いはほぼ全てといっていいほど、ぎゅうぎゅうにバーが立ち並ぶ。
通りに面した店はどこもオープンになっていて、大音量でヒップホップが流れ、タイトスカートのお姉さんたちが客引きをしている。
「ゴーゴーバー」「ピンポンショー」といろんな種類の性の遊び場が提供されていて、その内容と価格が書かれたお兄さんたちが男女構わず声をかける。
少し横道にはいると、看板もないお店の前に、お化粧をしたショートパンツの若い男の子たちがプラスチックの椅子に並んで座っている。手にはメニューが書かれたカード。
タイ人のお姉さんを後ろに乗せた外国人のお兄さんのオートバイが荒い運転で走り抜ける。
これがパトンの夜の顔なんだね。
夜のビーチに散歩に向かう道すがら、スイカジュースを飲み飲みそんな光景をぼーっと眺めながら歩く。余りにも自分の日常から離れていて、この上なくギラギラした街の真ん中で透明人間になったような気分になる。
バーカウンターのポールに捕まってダンスをするお姉さんたちの顔は無表情で、動きは気だるい。「私を見て! セクシーでしょ」という活気のある誘惑ではないのがタイらしい気がする。
マッサージ屋さんの看板にはときどき “NO SEX” の文字がある。これが書かれていないところにはそういうコースがあるということなのかもしれない。
部屋に帰ってもなんとなく気になって、夜な夜なタイの性産業について調べた。いろんな記事で目にするタイの性産業とHIVの関連についての項目も調べて読み漁った。
情報や数字の正確さは確かめられなかったし、それが分かったからどうだというのでもないけど、タイが抱える大きな社会問題だというのは分かった。
HIVももう不治の病ではなくなりそうだけれど、それでも一度の過ちに対して背負わせられる代償はやっぱり大きすぎる。
「日常を離れたくて開放的な気分を求めてここに来て、つかの間の天国を楽しんだと思ったらHIVに感染していた」。タイだけじゃなくて、いろんな国で起こっていることだとは思う。でもプーケットではそのイメージを連想させるものが余りにも多い。
プーケット=ビーチのイメージで特に下調べせずに目的地に選んでしまったけど、そしてちょっと圧倒されたけど、この空気に触れられてよかった。ものすごく人間臭がする。
自分から深い世界に入り込もうとしない限り、女性が1人で旅行するのにも特に危険という感じはしない。海は青くて、ビーチは砂が柔らかくて最高だし、他にも楽しめる場所は沢山あるし、食事もとても美味しい。コンビニも最高だ。
「あー、いい場所だった!」だけでは終わらない、裏の顔も惜しげもなく見せてくれるプーケット。人間の業の深さも垣間見ることができる場所です。