今日はカトマンズから南に5キロほど行った古都Patan パタンから観光スタート。
美の都とも呼ばれているこの都市、パタン(正式名称はLalitpur ラリトプールというそう)。西暦299年にヴィール・デーヴァ王に設立されたと言われているカトマンズ盆地で一番古い都市。世界遺産にも登録されている。
パタンは13世紀から18世紀代まで続いたマッラ王朝の首都として栄えた土地。いまでも王宮や多くの古い寺院が数多く残っている。
歴代の王が即位するたびに美しさを競うように建築物をつくり、一番多いときには12の王宮が存在したそうなのだけど、今残っている王宮は3つ。
2015年のネパール地震の影響での崩壊の跡がまだ残っていて修復中の建物もあったけど、それも含めて見ることができてよかった。
パタン ダルバール広場の王宮
パタンは工芸や建築や美術的な装飾など多くの職人を育てた土地としても有名なのだそうだけど、どの建物も造形がすごい。
レンガと木で造られている建物がほとんどなのだけど、細部までものすごく手間がかかっていて本当にきれい。「ここからは写真でお楽しみください」で十分な気がする。
ということで写真たくさん貼ります。
▲Patan Durbar Square ダルバール広場に入ってすぐの王宮。とても古そうだけど今でもこうしてみんな触れて、座って、とできるのがいいなあ。
▲左側の建物は現在も建て直し中。
▲コブラの上に鳩。そんなところにとまれるなんてずるい。
▲寺院の木彫りの装飾。
▲こんにちは。あなたはいつ彫られたの?
▲ネパールは雨季以外は湿度はそんなに高くない。昔の木造の建築物の息が長いのはそのおかげでもあるのかな。
▲私の家の壁にもこの仏様がいてほしい。
王宮内に入れる美術館は、Patan Museum パタン美術館とKing Mahendra Memorial Museum マヘンドラ博物館の2つがある。
建物の中は展示室になっていて、建築や装飾について詳しく知ることもできる。
歴代の仏像や装飾が並べられているフロアもある。
▲美術館入り口。曼荼羅の中に入っていくみたいでドキドキするね。
▲宇宙人が見ても「これはなんか尊い…」って思うんじゃないかなこのオーラ。
▲木彫りになっていた装飾のスケッチ。
▲中庭の角にあった木彫りの装飾。鏡が貼られているみたいに対称。
▲美術館の中庭には、地震で落ちた瓦を炎天下で掃除する女性たちが。気長で途方もない作業だけど、とても丁寧に仕事されていた。
▲中庭にあった石像。仏様会議かな。
建物内から見おろす中庭や、透かし彫りの窓から覗き見る広場の景色もまたいい。
透かし彫りの窓の手前は、腰掛けられるベンチになっている。
外を眺めながら、これが作られたのはなんて贅沢な時代だったんだろう、としみじみした。
▲ニレーシュが撮ってくれた「窓と私」
みなが自分のためではなく国や権力のためにものづくりをしてきた時間。そんな時代にはもう戻らないかもしれないけど、技術者たちの仕事が今なおこうして愛でられているのがすごい。ものを作る技術を持っている人って本当に素敵だなと思う。
建物の裏手には石や木の彫師さんもいた。角材や石を切り出すところから細かな彫りまで、複数人で分担して作業されていた。
歩き疲れて、広場の隅っこにあるレストランでお昼休憩。
「停電で冷たい飲み物が出せないし、作れないものもいくつかある」とのことだった。
私達がそこにいる間も停電中で、真っ暗なキッチンから料理が出てきていた。安くて美味しい、いいお店だった。
次の目的地に移動する途中、ショーケースの中に見たことがない小さなお菓子がたくさん並んでいるスイーツやさん(?)にも寄り道。ニレーシュが「このアイス懐かしい!」と素焼きのポットに入ったアイスを買っていた。ペースト状にしたナッツと、ミルクの味がする氷に近いアイスだった。
▲こちらがアイス。素焼きのポットがかわいかったので、この後はるばる日本まで持って帰ってきた
▲ここにもあった、お供え物のお店
▲車に乗って街を眺めていたら、このものすごい背の高い何かが人々に運ばれて街を移動していた。何かと思えば山車(だし)で、パタン名物の豊穣を願うお祭りの一部らしい。15メートルくらいあったのかな。巨大すぎて&車の中だったから全貌が写真に収められなかった。
地震の爪痕と地道な復興が見られる町、Bungamati バンガマティ
次の目的地は、タメル地区から車で13キロほど南下したところにある町、Bungmati バンガマティ。
復興が進んでいるパタンからも6キロほどしか離れていないのだけど、この都市はまるで昨日地震が起きたかのような状況だった。
パタンから都市部を離れ、段々畑になっている丘を登っていったところに町があった。
丘の上には人が暮らし、下の方に畑があるので、農業をしている人はみなカゴで荷物を背負っている。降りては登り、登っては降り…。山の国に暮らすって大変だな。
町の中はというと、こんな様子。
崩れ落ちた家は、もう一度使えるレンガと瓦礫に分けてある。新しいレンガも各所で積み上げられている。
この町の住人なのか、ボランティアさんなのか、若い男性たちがあちこちで建て直しをしている。
犬とヤギがとにかくたくさんいた。
人はせっせと働いているけれど、犬とヤギはくつろいでいる。あちこちで餌ももらっているし、全然痩せていない。
うーん、ネパールの人って本当に懐が深いんじゃないだろうか。
暮らしの復興までお金は届いているのかな
カトマンズではもつれもつれてすごいことになっていた電線も、この町ではあまり見ない。きっと夜になると真っ暗になってしまうんじゃないだろうか。
この家々を立て直している間、みんなどうやって生活しているんだろう。地震からもう3年以上も経つ。
幸い倒れなかったけど、傾いてしまったため細い木で支えられている家々もたくさんある。
ネパール人の平均月収は2万円かそれ以下と言われていて、アジアの中では経済的には最貧国でもある。
観光業が国を支えているから一番最初に復旧されるのは当然のことかも知れないけれど、人の生活まで完全に復旧するのにはまだまだ長い時間がかかりそうに見えた。
バンガマティの町の中には店という店もなく、お金を使える場所もあまりなかった。とりあえずみんなで座ってチャイは飲んだけど、せいぜい100円くらいにしかならない。
それでも建て直しをしている人もチャイ屋さんの奥さんも、町の人はとても暖かくて、微笑みかけてくれたり手を振ってくれたりしていた。心の余裕が目に見える感じがした。
▲犬まで優しかった
行ったら寄付がしたくなった
旅行から帰ってきて、国連のサイトからネパール地震の緊急支援の寄付をした。
金額は自分で決めることができて、クレジットカード決済ができて、1回の寄付または月々の寄付を選択できる(2,3ヶ月かかるけど領収書も発送してくれる)。
町はまだまだ悲惨な様子だけど、建て直す人は前向きで明るくて、私にとってネパールに対する印象は「同情」じゃなくて「尊敬」の方だった。
この土地に行かなくても、頭の中で「どんなに大変だろう」と想像して共感して、可能な限りの寄付ができたらそれがいちばん素敵だと思う。
私もそんな心の余裕が持てるように、楽しく働いて役に立つことに使えるように、お仕事がんばろう…と思いながらこの町を後にした。
励ますつもりが励まされちゃったよ。
ネパールって、本当に、いろいろ素敵ね。
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