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(第8話)保護していたペンギンたちを海に返す日。ビシェノ・ペンギン物語【タスマニア滞在記】

前回までのおはなしはこちら

さて、この日がようやくやって来ました! ペンギンたちの卒業試験の日。

海に帰るための条件はこの3つ。

人を避けるようになっている
毛がウォータープルーフになっている(きちんと水の上に浮かぶ)
十分な体重がある

さて、みんな厳しい条件をクリアできているのでしょうか? 海に帰れるのでしょうか。

泳ぎのチェックと体重測定

エサをあげていても、「イヤイヤ」がハンパじゃなくなってきているペンギンたち。反抗期のまま家を出ていっちゃうなんて、お母さん、さみしい…。そんな家族ドラマを繰り広げたくなる。

エサをあげながら、イヤイヤがひどいものとそうでないものに分けたら、今度は泳ぎのチェック。人を避けられるようになっていても、まだ水に沈んでしまっているものは、もう少し「居残り組」に残留することになる。

そして最後に体重測定!

実はこの日初めて、「シン、記録用に写真を撮って」とヴィッキーに言ってもらえて、パディメロンパークにカメラを持ち込んだ。嬉しかった。


はい、あなたはもうちょっとです。 え〜。

最後まで子ども思いなヴィッキー

20数羽いたペンギンのうち、いま小屋にいるのは18羽。居残り組は13羽。

今回海に戻れるのは5羽だった。

「できるだけ海が穏やかな日に放してあげたい」というヴィッキーの思いで、ペンギンたちを海に放しにいったのは体重測定をした2日後の早朝だった。

やって来た「さよなら」の日

4月の初めにもなると、朝はけっこう冷え込む(タスマニアの緯度は北海道と同じくらい。4月には、北海道の10月くらいの気温になる)。

朝の6時を少し回ったところ。

薄暗いなかペンギンたちをカゴに入れ、イーリの車のトランクに積み込み、ヴィッキーと私も車に乗り込む。ヴィッキーがパディメロンパークの外にいるのを見たのはこれが初めてだった。


まだまっ暗な6時過ぎ。街灯はない。

なんだか緊張してしまって、車内で何を話したらいいのか分からない。

何度も経験してきた時間なのだろうけど、こういうときにヴィッキーはどんなことを考えるのだろう。決して強くはない我が子を、きびしい社会に送り出す親の気持ち。

ペンギンたちの帰る場所

向かったのは、イーリがいつもペンギンツアーをしている海岸だ。

ここはたくさんの野生のペンギンたちが巣を作っている場所で、朝に海に出ていったペンギンたちは、夜になると自分たちの巣に戻ってくる。

車を停め、現地で待っていたイーリの同僚も合流して、ペンギンたちを連れて海岸に出る。

今日この海岸から海に出て、夜またこの海岸に戻ってきてくれたら本当にうれしい。私たちはその場面を見ることはできないけれど。


この砂浜に帰ってくるんだよ…!

行く? やめる? のペンギン会議

ペンギンたちを入れてきたカゴを砂浜に置き、海の方に向けてパッカリ開く。

おそるおそる外に出てきたペンギンたちは、立ち止まったまま全然海の方に向かわない。5羽が集まって、ヒソヒソ話し合いをするみたいに丸くなって、海の方を見もしない。

このまま海に向かわなかったら、みんなをもう一度カゴに戻して、パディメロンパークに連れて帰ることになるんだろうか…。


なんだなんだ! 広いぞ!


どうする? どうする? ただいまペンギン会議中。

やっぱり野生の子だった

「ぜんぜん動かないね…」

不安になりながらみんなでじっと見つめていたら、決心がついたのか、ようやく1羽がパタパタとひとり海の方に向かいはじめた。

それにつられて、今度は他のペンギンも一斉に海に向かいはじめる。一番出遅れたのは、みんなに追いつこうと必死に走っていく。


ええ〜い、行くしかない! 待ってよ〜


海だ! 進め〜!

長いこと迷っていたのに、動きはじめたと思ったら一瞬で帰っていくペンギンたち。海に入った途端、みんな別々の方向に泳いでいく。


見えなくなるまで見送るヴィッキー

みんな元気で生き抜いてくれたらいいね、と誰かが言うと、1羽生き残れたらいい方かもしれない、とヴィッキーが言った。

感慨にひたることもなく、「さて、帰ろうか〜!」みんなとにぎやかに話をしながら帰っていくヴィッキーが格好よくて、私はその背中を見ながら歩いた。これがヴィッキーの毎日なのだ。

ジェフ、ヴィッキー, ありがとう

さて、パディメロンパークには居残り組たちがまだまだ待っているけれど、日記の「ペンギン物語」は今日でおしまいです。

動物保護の考え方は色々あるし、倫理観の食い違い、意見のぶつかり合いはあちこちで起こっているけれど、私はこの夫婦の「人に考え方を押しつけず、自分がしようと思ったことをただひたすら地道にやる」という姿勢が大好きだった。

ただ、2人がとても素晴らしいという評判は今のところ、十分な予算よりも困っている動物たちの方をよりたくさん連れてきてしまっているよう。

2人が予算や仕事量や生活に困らないよう、サポートしてくれる人ができるだけ多くいてくれることを切に願っています。

手伝うことは続けることが難しいのに

そして、寝るのが大好きな人なのに、自分で決めたスケジュールを守って朝晩と毎日のようにお手伝いをしているイーリ、すごい。イーリがいたからこの2人に出会えた。ありがとう。

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動物たちのリラックスした表情がいっぱい!

Pademelon Park パディメロンパークHP

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