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インド人の夫とベルギーで2人暮らし中。30代前半から仕事を辞めて海外1人旅をスタートし帰国後夫と出会って国際結婚したり海外移住したり。何歳になっても勉強しながら楽しく自由に生きることを誓います。

バングラ通りで移民の男の子とピンポンショーに行った日のこと【プーケット旅行記番外編】

(※この日記は2020年1月に、2017年2月当時のことを振り返って書いています)

3年前にタイのプーケットを1人で旅行したとき、ちょっと不思議なことが起こった。

その時旅行記も書いたのだけど、その「不思議なこと」については恥じる気持ちが勝って書かないことに決めた。

月日が経つにつれてその記憶が薄れていくのがもったいない気がし始めたので、今更だけど書き残しておくことにする。

2017年2月。

そのとき私は仕事を辞めて香港から1人旅を始めた。20日ほどを香港で過ごし、それからプーケットに移動して10日ほど滞在した。

その頃体調を崩していたのもあって、どこか暖かい土地でゆっくり美味しいものでも食べて身体を労り、その後の人生のことを立ち止まってゆっくり考える時間が欲しかった。正直場所はどこでも良かった。

安いLCCのチケットが取れたのがたまたまプーケットで、香港出国の数日前に行き当たりばったりでチケットを買ったのだった。

プーケットは賑やかすぎた

東南アジアはそれが初めてだったのだけど、実際に行ってみるとプーケットはかなりのパーティータウンで「ビーチでゆっくりしよう」と思っていた私は少し場違いな旅行者だった。
長袖のTシャツとジーンズを履いて空港に降り立ち、ひらひらしたワンピースや露出度の高いショーツを履いたグループの旅行客に混じって1人戸惑いながら街の様子を探った。

もう少し静かな場所を選べばよかったと思いつつも、肌を刺すような日差しと蒸し暑さのなか自分の身体に元気に血が巡っていくのを感じた。

毎日自分の行きたいところだけを見て、食べたいものだけを食べ、周りを気にせず時間を過ごしているうちにカオスな街にも少しずつ慣れてきた。

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移民の男の子との邂逅

運動もかねて日が沈みはじめた街を散歩しているとき、テイラー(採寸してシャツやスーツを作るお店)の前で茶色の肌をした男の子に話しかけられた。

ほっそりした身体に清潔なシャツ。そのテイラーで働いているという。
職場の前で変なふるまいもしないだろうと警戒もせず、相手の身の上を聞いたり自分の旅行について話したりした。
聞いてみると、親の代から移民としてタイに移り住んだインド系の男の子だった。

それほど英語が得意なようではなかったが、誰かと話せて私もリラックスした気持ちになっていた。
「仕事も終わるから近くの食堂で一緒に食事しよう」という誘いにのった。

ぎこちない食事

案内してくれた食堂は通りを少し入ったところの建物と建物の間、行き止まりになっている路地にあった。
運動会でよく見るようなテントのようなものを並べた下にテーブルが並んでいるだけの簡素な露店だった。

店員にメニューを持ってきてくれるような素振りはなく、彼が取りに行ってくれた。
私は食べたいものとビールを注文したのだけど、彼はメニューを見ることも何かを注文する素振りも見せなかった。

食べないの?と聞くと「自分はいい」と言う。
この状況は何だろう。食事もしないのに食事に誘った彼の意図は何だろう。
居心地が悪くなるのを感じつつも、ビールと料理が運ばれてきた。

食べているのを見つめられるのも居心地が悪く、私のものを彼とシェアしようとすると「それなら自分も注文する」とチャーハンを頼んだのだった。
彼はあまり喋らず、なんだかぎこちない時間が流れていた。

しばらくして、隣の席に座ったタイ人の3人組の男性が私に話しかけてきた。
テンションが高く、最初は何を言われているのか分からなかったのだけど、よく聞いてみると
「なんでインド人なんかと一緒にいるの? そいつがタイ人じゃないって知ってるの? インド人は良くないよ。俺たちと遊ぼうよ」という内容だった。

目の前の彼は面と向かって投げかけられる悪口に反論もせず、ただバツが悪そうにしている。
こんなにあからさまな人種差別をされているのか。私はその3人組に腹が立って、3人いないと女性に声もかけられないの? 黙ってよ、という内容の暴言を吐いた。

インド人の移民はこの国ではこんな風に扱われることがあるのかと、失礼ながらも同情するような気持ちになってしまった。

ようやく食事が終わって会計を頼むと、彼は自分の分を支払う素振りもなく、ただじっと待っている。
普段からこうやって観光客にタカっているのかな…と勘ぐりながらも、揉めるのも面倒で彼の分も一緒に支払いを済ませた。

もう1軒、というミステイク

店の外でそれじゃあね、と帰ろうとすると、「お礼に面白いところに連れて行く」と彼が言う。
このとき「もう1杯くらい飲んでから帰ろう」と思ったのが間違いだったのだが、彼が私を連れて行ったのが奥まったところにあるバーのような場所だった。

なんだか怪しい入り口をくぐり中に入ると、そこには外国人の観光客ばかりがステージを囲んで座り、ピンクとブルーのあやしい光で照らされ続ける店内が広がっている。

ウェイターに案内されてハイチェアに腰掛けた。

店の趣旨を私はまだ私は理解しておらず、「何のステージなの?」と聞くと「ピンポンショーが始まる」と言う。

知らずに足を踏み入れてしまったのだけど、ピンポンショーとは「タイの各地で見られるセクシャルなショ」ーで、「女性たちが膣を使っていろんな技を見せるというタイ特有の観光客向けエンタテイメント」のことだった。

ウェイターがやって来て、彼がメニューも見ずビールを2本注文した。店員がすぐに瓶を2本持ってくる。

ここがいかがわしいお店だという事は分かったけど、この店の彼の支払いまで持たされたらたまらない。そしてこのビールは一体いくらなんだろう。

場所を告げずに奇異な店に連れてきて、飲み物も勝手に注文する相手の振る舞いに不信感が募り、ここに来た自分の選択が間違っていたことを感じ始める。

せめて相手の行動の責任は相手にとってもらおうと「今度は自分の分は払ってね」と伝えると、彼はただニヤニヤしているだけだった。

私が「払えないなら私は帰る」と席を立つと、様子をうかがっていたウェイターが飛んできた。

「私は帰ります」と言うと2本分のビールの支払いをするまで帰さないと言う。フタはもう開いているじゃないか、と。

カモ失格

彼の方はただじっと黙って、私の次の行動を伺っている。
「私はわたしの分は払う。でもあなたの分は払わない」と、彼の顔からニヤニヤが消えるまで何度も伝えてみる。
彼は自分のポケットと財布をひっくり返し「お金がないんだ」と主張してくる。

やっぱり私はカモだったのか。

Hey, are you in trouble? (なんか困ってるの?)と既に泥酔している隣りのアメリカ人が笑いながらからかってくる。よく絡まれる日だ。

私はウェイターに金額を聞き、彼に身分証を出させてそれを預かり「ボスにお金を借りるなり、自分の分のお金を持ってきて」と最後通牒を述べた。

彼はしぶしぶ店を出てどこかに消えて、私はその場に残された。帰ってくるかも分からなかったけど、何もせず被害者ヅラするのは嫌だった。

それから私は1人でビールを飲みながらピンポンショーを見た。

無表情とカエルの悲劇

中が丸見えの短いスカートを履いた若いお姉さんが最初に登場して、踊りながら膣からピンポン玉を1つずつ、何個も取り出してステージを盛り上げる。
その後も手品のようにずらずらと旗を取りだしたり、花が出てきたりして、そのたびに観客から歓声が飛んだ。

何が出てきたかはもうあまり覚えていない。
途中でお姉さんがテーブルを回ってチップを回収していたりもした。

お金を取りに帰った彼も途中で帰ってきて、隣りでじっとステージを見つめていた。

ステージ上では中盤で大御所のような女性が登場した。がりがりに痩せた、おそらく40代半ばくらいの女性。
さっきのお姉さんと違ってこの人はどこまでも無表情だった。タバコを吸いながら膣から次々と痛そうなものを取り出し始めた。

釘のような尖ったものをいくつも、それからナイフや、トゲのある何か。

それから膣から金魚を水槽に放ったり、終いにはカエルまで出てきた。どちらも生きていた。

ステージにあげられた外国人が、お姉さんが性器で煙を吹かせたタバコを吸うよう手渡されたシーンもあった。Gross. No, no, no, no way. (気持ち悪い。ありえない)と男性は拒否し続けた。

女性はただただ無表情でタバコを吸いながら面白くなさそうに仕事を続けていた。
私はどんな顔をしながらそれを見ていたんだろう。

ピンポンショーの存在意義

私は結局ショーを最後まで見た。

なんだか色々おかしな夜だった。見終わってみても、自分がどんな気持ちになったのか自分でも全然分からなかった。

ピンポンショーで見たものは、全くエロくなかった。ただ、性やセックスや女性や膣の文化的な世界観・価値観が激しく歪んでいた。

私はどうして途中で帰らなかったんだろう。他の人はどういう気持ちになりたくてこれを見に来るんだろう。

当時もだったけど、今になって考えても何の結論にもたどり着かない。


彼が持ってきたお金の足りない分を少し助けて店を出た。
料金は1人分600バーツ(2000円ほど)だった。

テイラーの見習いで仕事をして、それほどお給料も高くないはずの彼にそんな金額を払わせたことに罪悪感が残った。これは私が罪悪感を感じるべきなんだろうか。こんなことを考えるほうが失礼なのか。よく分からない。

そもそも彼はそんなにピンポンショーを見たかったのだろうか。今までに見たことがあったのだろうか。

どちらにしてもお互いにとって不運な出来事だった、とその時は思った。

でも私はこの日のことを今も鮮明に覚えている。
不運も時が経つと思い出に変わる。少なくとも私の方はそうなった。


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