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ホテル出発後、蚊にさされの薬と道中のお菓子を買い込んで、Grabバイクでベトナム鉄道・ハノイ駅に到着!
Grabの運転手さん、駅で荷物を段差の上まで上げてくれるという紳士ぶりだった。この優しさはベトナムの国民性なのかな。出会う人出会う人、穏やかで友好的でのんびりしていて、とにかく優しい。
いざ、ベトナムの夜行列車初体験
カウンターで予約を確認してもらった後は案内のお姉さんが丁寧にも電車まで連れて行ってくれた。ここでもまた、なんというサービス。
そして実は座席を手配してもらっているとき、なぜか「ちょっと賑やかな座席でも大丈夫ですか?」と聞かれた。意図が分からなかったのだけど、なんだか面白そうだと思って承諾したら、列車に乗り込んですぐその意味が分かった。
私の席(ベッド)があったのは、ツアーご一行さまのお部屋の中だった。というか、私のベッドのある部屋前後5部屋が同じ団体客で、そこに私が放り込まれたかたちになっていた。
状況把握にいそがしく、キョロキョロと周りを観察しているあいだに列車は出発。完全なるアウェー戦! ダナンまで14時間の旅が始まった。
ガイドのナムと楽しい仲間たち
旅先でのこういう予想してなかったハプニング大好き。神様ありがとう。
そんなこんなで、ツアー客約20人による寝台列車大宴会に参加しています。かんぱ〜い。
オーストラリアなまりの英語が飛び交う団体客をまとめていたのは、ベトナム人のツアーガイド、ナム。
これからしばらく一緒に過ごすから、一緒に楽しもうよ!とみんなに自己紹介までうながしてくれて、私はその20人ほどの皆んながどこから来ているのか、どんな構成なのか、大体把握できた。
ナムは魚が入っていそうな発泡スチロールのボックスにパーティーセットを用意してきていて、中には2Lペットボトルに入ったお酒と、割りもののセブンアップと、大量の氷と、ナムの家の庭で採れたというライムがゴロゴロ入っていた。
どこからかナイフを取り出してライムをカットし、人数分のカクテルを作っていくナム。電車が揺れると皆んなオーゥと声を上げて自分の飲み物を守る。飲む前から愉快。
私も一つ手渡されてパーティーに参加した。
「ベトナムのライスワイン」とナムが説明していたお酒はかなり強くて、ちびちび舐めるように飲んだ。
4つのベッドがある部屋で、私と同室だったのはガイドのナムと、ニュージーランドから来たボブ、家族で参加しているオーストラリア人のポールだった。オトコ部屋。
ナムがホストだから、パーティーの間はいろんな人が部屋に出入りする。
入れ替わり立ち替わりで、飲み物をおかわりしては立ち話がはじまり、ベッドに腰掛けて更に話し込み、しばらくするとまた部屋にもどり、別の人がやってくる。
遠距離カップル、愛妻家、ナンパ師。バラエティーに富んだ面々
団体客の大半はオーストラリアの各地から参加している人だった。一瞬の出会いだったけど、その場にいた人たちの紹介を少し。
仲良しこよしで微笑ましかったカップルは、アイスランド人のクリスとイギリス人オーストラリア在住のキャシー。
2人はマッチングアプリで出会って、今は離ればなれで暮らしているけれど近々結婚するのだそう。
住んでいる国がかなり離れているから、間をとってベトナムで会うことに決めたのだそう。
なんて素敵な話なんだ…。クリスは本当にバイキングみたいな体格、風貌をしていた。ふくらはぎまで破裂しそうにパツンパツン。どんな動物も一瞬で捕まえられそうだった。
麦わらのハットを被ってしぶい雰囲気を醸していたのはボブ。ばりばり現役の見た目によらず、なんと75歳だという。建築業界で働いていたがずっと前に引退したのだそう。3回結婚し、3回家を建てて、3回離婚したのだそうだ。
2人目の奥さんの時に、とか3人目との息子が、と話の端々にいろいろな人物が登場する。カラフルな人生。
しかも女たらしは現役のようで、こちらの居心地が悪くなるくらい顔や体をじっと見つめてくるし、頻繁にウインクを送ってくる。
正直ちょっと面倒くさかったけど、自分の父が外で年下の女の子に邪険にされてたらなんかイヤだな、と思いなおして一応丁寧に接した。
そんな私の努力も知らず、さりげなく胸をちょん、とさわってきた時には「金玉つぶすぞ」という視線を送り返した。伝わってたらいいんだけど。
ポールはオーストラリアなまりがかなりかわいいビッグなお父さんで、奥さんと娘さんと参加していた。
娘さんは私と同じくらいの年齢で、ポールは今なお小さい赤ちゃんのように娘さんの一挙一動に目を配り、溺愛しているようだった。「お父さん、歯ブラシ」「ポール、洗顔」と家族みんながポールのリュックの中にある荷物を受け取りに来るのがほほえましかった。いいお父さんでいい旦那さんなんだな。
ガイドのナムは「オー・マイ・ブッダ」(Oh my Godの仏教徒バージョン)が口癖のベトナム人で、ものすごく元気だった。
2階のベッドにもステップも使わずよじ登る。「ほらみんな飲んで」「クリスはあと3杯!私はもう寝る」とかなり強引な部分も含めてみんなナムが大好きで、彼が何か言うたびどっと笑いが起こる。
最初は強すぎたお酒も、氷が溶けるのとみんなのお話が進むのにつれていつの間にか美味しく感じるようになっていた。
ナムは皆んなを盛り上げるだけ盛り上げて、自分は颯爽と2段ベッドの上で一番に眠り始めた。
これだけの人数をまとめながら楽しんでもらうって大変なんだろうな。そして空気が出来上がったところでじょうずに休む。すごい。プロの仕事ぶり、しかと見せてもらった。
みんなのパーティーは12時頃お開きになって、私も顔を洗ってベッドに入った。そこから朝まで、調節できないクーラーが寒すぎでほとんど眠れなかった。
みんなの朝がはじまった
朝がきて、人の話し声で目が覚める。6時過ぎ。
顔を洗ったり、歯磨きをしたり、コーヒーを入れたり、みんなが部屋の前を行き来して支度をする。
電車内で配られていた朝食を私だけ1つもらった。
お弁当にはおこわと豚肉がはいっていた。朝からヘビーだけどなかなか美味しかった。売り歩いているヨーグルトもひとつ買って食べた。
みんなが降りるのは、私の降りる駅の1つ前Hue(フエ)だった。
19世紀〜20世紀書けての王朝、阮朝の首都で、王宮をはじめとする歴史的建造物が立ち並ぶ都市のよう。中華圏文化が色濃く残っているみたいだった。水上で生活する人もいるんだって。いいなあ楽しそう。
ナムが「みんな荷物ちゃんと持った?」と1人1人に声をかける。みんなキャッキャしながらそれに答えていた。
私もみんなにさよならをして、急に静かになった部屋から駅内の売店やまだ外にいるみんなを眺めていると、今度はかわいい子供が2人とその両親が部屋に入ってきた。
寝台列車は出会いがいっぱい。ロンガンの思い出
子どもたちは5歳くらいのお姉ちゃんと3歳くらいの弟で、弟は興奮してひたすらに叫んでいた。お父さんが叱って、お母さんが申し訳なさそうに「ごめんなさい」と私に合図する。
私ももう寝れそうにないし、思う存分はしゃいでもらっていいんだけど「全然気にしないで」というのが伝わらなさそうだったので、男の子と一緒になって雄叫びをあげたりしてみた。
会話をすることはできなかったけどとてもほほえましい家族で、子供たちが「いないいないばー」のように次々と「ハロー」「ハロー」と私のベッドを覗き込んでは顔を引っ込める。こんなところでベトナムの家庭の空気につつまれるなんて思ってもいなかった。
お菓子を食べたりジュースを飲んだり、ピクニックのように楽しむ家族の旅路。窓の外に見え始めた海を写真に撮ったりゴロゴロしたりしていたら、お母さんが途中で両手いっぱいにこんもり盛られた龍眼(ロンガン。ライチより一回り小さい、ライチみたいな味のフルーツ)を二段ベッドの上にいる私に手渡して、にっこり微笑んでくれた。
…ありがとう。まだ電車を降りてないけど、もうすでにダナンに来てみてよかったなあ、という気持ちになっている。
飛行機はあっという間に到着できるけど、こんな時間もまた贅沢。今度はフエやホーチミンも行ってみたいなあ。寝台列車、俄然おすすめです。