今回ネパールを訪れることになったのは、ニレーシュ経由で出会った友人の結婚式がきっかけだった。
インド人の新郎 Naren ナレン とネパール人の新婦 Pranita プラニータ はそれぞれ以前から日本で暮らし、働いていた。2人が出会ったのも日本の地だった。
インド人仲良し3人組の歴史
ニレーシュとナレンとビズのかつての独身3人組は、飲みに、旅行にといつもつるんで遊んでいた。
日本に4年いる間に、1人ずつ恋人ができていって、それぞれ結婚を考えるようになって…と少しずつ環境が変化しながらもこの3人組の絆はいつも大事に守られてきたみたい。
私もニレーシュと付き合い始めた頃、「あの2人と仲良くなれなかったら長く付き合っていくのは難しい」と言われたことがある。
なにそれー、やな感じー、と思ったけど、ナレンもビズも、それぞれのパートナーのプラニータもゆいちゃんも、みんな優しくて純粋で素敵な人たちだった。
食事に行ったりキャンプに行ったり、誕生会をしたりBBQをしたりと、私の生活がなんだかちょっと華やかになったのもみんなのおかげだ。
新郎新婦の登場です
式場になったのは、タメル地区のホテル「Hotel Vaishali(ホテル ヴァイシャリ)」。
2日に渡って素敵なお部屋もとってもらったので、宿泊していたマントラホテルともお別れした。
今回は新婦プラニータの方の祖国、ネパールでの挙式ということで、衣装や儀式もネパール式。
お式は昼から、プールのある中庭で始まった。
▲ネパールの民族衣装で新郎ナレンが登場。漂うスター感
▲左から、ビズ、ナレン、ワサン、ニレーシュ
▲ネパールのお土産屋さんでもよく見た短刀。結婚式に刀、ってすごい
▲新婦を待ちながら、ワサンをカッコよく撮る練習もした
▲新婦側で準備される贈り物の数々
▲新婦プラニータが登場! なんてゴージャス…。追っかけのようにシャッターを切り続けた
▲黄金に輝くプラニータ。眩しすぎる。東洋のお姫様
▲鮮やかな原色が太陽に映える。インドやネパールの原色の世界、好きだなあ
ネパール式結婚式の式次第
日本の外で結婚式に出席するのは初めてだったからどんな感じか楽しみにしていたんだけど、このネパール(のヒンズー教徒)式結婚式、ゴージャスな衣装もさることながら祭司の方が執り行う儀式が一番興味深かった。
(日差しを避けるためのカバーがたまたま緑色で写真も緑色っぽくなっているけど、そういう決まりごとではありません)
出席者が待ち受ける前で新郎新婦の入場があって、会場内で食事して、お色直しがあって、ケーキ入刀して、という日本の披露宴みたいな感じとはぜんぜん違う。
どちらかと言うと神前式に近いかもしれない。
神様に捧げる祭司さんが席につき、しばらくすると新婦側のお父さんがそのとなりにやってきた。2人の前にはたくさんのお供え物が並んでいる。花、糸、穀物、水、木の実など、お供え物も沢山の種類がある。
2人の前には火が燃やされていて、祭司さんはお経を読みながらお供え物を次々と火の中に投げ入れていく。頭の上に花を投げたり、米を投げ上げてそれを浴びたりもしている。
使う道具や動きも細かい手順が色々あるようだった。
祭司さんは経本のようなものの頁をめくりながら、こちらのひしゃくで水をすくっては、あちらの小皿から供物を投げ入れて、とまるで手際よく料理を作っているように儀式を進めていく。
となりのお父さんもあれを手渡され、これを手渡され、と祭司さんに導かれながら一緒にお供え物を燃やしていく。
式の途中に食事の時間も
興味深く見ていると、周りからどんどん人がいなくなっていく。どうやらお昼の時間らしい。ネパールの結婚式は5,6時間に渡って行われる(それより長いこともザラ)出席者はみんな好きな時に会場を出入りしたり、食事をとったりする(新郎や新婦まで席を外すことも珍しくない)。
私もみんなと一緒に食事しに、結婚式用に用意された食堂に下りた。ビュッフェ形式で、好きなものを好きなだけ取って食べていい仕組み。
▲食べかけでごめんなさい。何もかもが美味しすぎて写真のことすっかり忘れてた…。
食事の用意を担当していたのは新郎側のご両親で、食事は新郎側の地元の南インド料理。ネパールと南インドでは勝手や食材も違い、料理の準備にとても苦労されたようだった。
新郎側のお母さんが全ての席を回って「味は大丈夫? 必要なものはないですか?」と確認されていた。「ゲストが満足しているかどうか」が何よりも重視されるインドのおもてなし文化をここでも垣間見た。
並んでいた料理の名前を私は全然分からなかったのだけど、どれもびっくりするくらい美味しくて、私は1回、ニレーシュは3回お替わりした。
これまで食べたインド料理の中で一番美味しかったと思う。スパイスは勿論使われているけどそれぞれ繊細な味付けで、1つずつ口に運びながら、その野菜を使った理由に納得する。
ニレーシュが隣りで「…やっぱりもうちょっと食べる」とシリアスな顔で打ち明けてくるのが笑えた。食後にはピンク色でふわふわのアイスクリームもいただいた。銀の食器で出てくるのが嬉しい。
…うちにもこのうつわ欲しいな。
新婦、新郎が儀式に参加!
さて、食事を終えて式に戻ると、こんどは儀式の同伴役が新婦の父から新婦へバトンタッチされていた。あでやかな衣装で火の前で手を合わせるプラニータ。
両手にはメヘンディ(ヘナという植物を使って染めるタトゥー)がびっしり施されている。繊細で装飾的で、見ているだけでうっとりする。幸運を呼ぶとか、魔除けのような役割もあるのだそう。
祭司さんとプラニータとの儀式が終わると、新婦側のお父さんが新郎を連れてやってきて、プラニータのとなりに座らせた。式の中盤でようやく新郎のお役目が始まる。
新郎ナレンやお父さんがかぶっている帽子は「トピ」というネパール人男性の伝統的民族衣装。ヒマラヤの山を模した形とも言われていて、真ん中をすこしへこませることで謙遜の意味もあるのだそう。
普通の服装でこの帽子をかぶっている人も街中やお寺でよく見かけた。
祭司さんからの説明を受けて、祈りを捧げていく2人。
日本だったら「お2人のはじめての共同作業です」みたいなナレーションが入りそうな場面だけど、2人が並ぶとおとぎ話みたいに幻想的でゴージャスだった。
首輪を掛け合って夫婦になる2人
2人の儀式が終わると、いくつかの首輪を掛け合うというイベントが待っていた。
この行為によってで2人は正式に夫婦になるのだそう。
出席者の人も2人のぐるりを取り囲んで、写真を撮りまくる。
まずは新婦から新郎に。
首輪を掛けられないように反って逃げる、というのも若い人たちの間で楽しまれているイタズラのよう。そんな姿をみんな微笑ましく見守っている。
今度は新郎から新婦に。
この場面で隣りに座っていたニレーシュは「これで2人はもう夫婦だよ」と何度も説明してくれながらウルウルしていた。
ニレーシュの泣くタイミングがなんとなく分かっている私は「あ〜やっぱり泣いた〜」とどうしても笑ってしまう。ジャイアン気質。
でもその純粋なところがかわいいね。好きなだけ泣いていいぞ、のび太。
式が終盤に近づき、お供え物を火にくべ続けていた祭司さんの手元にも燃やすものがなくなっていく。火も小さくなり、煙も立ち始めた。
出席者の人に、ポシェットみたいな袋に入ったお土産(?)が配られる。
中にはクルミやピスタチオなどの木の実、チョコレートやキャンディ、カルダモンやクローブやシナモンなどのホールスパイスがゴロゴロ入っていた。
これでナレンとプラニータのネパール×インド式結婚式が終了。
ゴージャスで、親密で、微笑ましくて、しかも美味しい素敵なお式だった。
2泊も面倒見ていただいたのに加えて、その日の夕食、次の日の朝食、昼食…と食堂では何食分も食事を用意していただいていた。
プラニータも、ナレンも、ご親族のみなさんも、
素敵なおもてなしを本当にありがとうございました。
私にとっても貴重で思い出深い日になりました。
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